2026年10月29日(木)
日独が経済安全保障で共同宣言、自民党はエネルギー支援の見直しを提言
- 日独首脳は経済安全保障協力の共同宣言を出し、重要鉱物の供給源の多角化と非市場的な政策・慣行の拒絶で一致しました
- 自民党と日本維新の会はエネルギー・物価高対策を首相に提言しました。経済産業省は中小企業向けのサイバー相談窓口を設けました
今日の要点
- 10月28日、日独首脳会談で経済安全保障協力に関する共同宣言など3文書が出されました。
- 首相は、EUの産業加速化法案に強い懸念を伝え、適切な対応を求めました。
- 自民党と日本維新の会が、中東情勢の長期化を踏まえたエネルギー・物価高対策を首相に提言しました。
- 経済産業省は10月27日、中小企業向けにサイバー対策の無料の特別相談窓口を設けました。
- カンボジアとの円借款とスリランカとの無償資金協力の書簡が、相次いで交わされました。
日独、経済安全保障で共同宣言
事実
10月28日、首相は来日したドイツのメルツ首相と約30分会談しました。両国は首脳共同声明、先端技術協力の共同宣言、経済安全保障協力の共同宣言を出しました。経済安全保障の宣言は、重要鉱物の供給源の多角化と、自動車産業でのレアアースの代替可能性を高めるとしています。重要鉱物の恣意的な輸出規制などの経済的威圧に、深刻な懸念を表明しました。過剰生産能力と市場の歪みをもたらす非市場的な政策・慣行も拒絶するとしました。首相はEUの産業加速化法案に強い懸念を伝えました。部隊間協力の枠組みの検討と、AIハイレベル対話の立ち上げでも一致しました。
T&S の見方
重要鉱物の調達先を一国に頼らないことは、経済安全保障の土台です。同じ懸念を持つ工業国と組むことで、交渉力も高まります。一方、EUの域内優遇策は、友好国であっても自国の産業を優先する現実を示しています。反対の見方では、対中国を念頭に置いた連携は、最大の貿易相手との関係を冷やし、日本企業の販路を狭めるおそれがあります。
経営者への含意
レアアースや重要鉱物を使う企業は、調達先ごとの依存度を洗い出してください。欧州で販売する企業は、EUの産業加速化法案の行方を注視する必要があります。
自民党、エネルギー支援の見直しを提言
事実
10月28日、自民党の小林鷹之政務調査会長が首相に提言を申し入れました。同じ日、日本維新の会も中東危機の長期化を踏まえた提言を申し入れました。自民党の提言は、ガソリンなどの激変緩和措置について「持続可能な制度への円滑な移行を図るべき」としています。提言は、12月以降、春先に向けて基準価格を毎月段階的に見直すことを基本とする方向性を示しました。電気・ガス料金の支援の実施も求めました。灯油は価格の監視を強めるよう求めています。化石燃料の調達先と輸送経路の多角化、海上輸送の保険能力の補完も重要だとしました。これに先立つ10月27日の会見で、赤澤経済産業大臣は、首相の指示を踏まえ、支援単価や措置の出口も含めて柔軟に検討すると述べていました。
T&S の見方
補助を続けるだけでは、輸入燃料への依存は変わりません。調達先と輸送路の多角化は、エネルギーの防衛そのものです。反対の見方では、物価が高い中で補助を縮めれば家計と中小企業の負担が増え、景気を冷やします。補助を延ばして財政を使う方が、回復を確かにするとの意見もあります。
経営者への含意
提言どおりに支援が縮小されれば、燃料費は12月以降に段階的に上がる可能性があります。その場合でも成り立つ計画を立ててください。冬場の電気・ガス代は、支援策の中身が決まってから見積もり直すと安心です。
中小企業にサイバーの無料相談窓口
事実
経済産業省は10月27日、中小企業・小規模事業者向けのサイバーセキュリティの特別相談窓口を設けました。窓口は各都道府県のよろず支援拠点と、中小企業基盤整備機構のIT経営サポートセンターです。相談は無料です。商工団体、金融機関、税理士などを通じて周知します。10月26日の関係閣僚会議で、首相が相談窓口の抜本的な拡充を指示したことを受けた対応です。赤澤大臣は、AIも使って攻撃者の視点で弱点を確かめる「ホワイトハッカーチーム」を来月中に立ち上げる予定だと述べました。
T&S の見方
供給網の弱い部分は、守りの薄い中小企業です。国が相談の入口を広げることは、経済安全保障の底上げになります。反対の見方では、相談窓口だけでは人材も費用も足りない企業の対策は進まず、実効性は限られます。
経営者への含意
取引先から対策の状況を問われる場面が増えます。バックアップと権限管理を点検し、不安があれば窓口に早めに相談してください。
アジアのエネルギーと防災を支援
事実
10月27日、カンボジアとの間で「経済の強靱性向上・エネルギー供給安定化のための緊急支援借款」の書簡が交わされました。アジア開発銀行との協調融資です。金利は年2.80%、償還期間は据置7年を含む25年です。外務省は、首相が立ち上げた「パワー・アジア」の下の案件と位置づけています。カンボジアでは、日本の供給網を支える自動車部品や電子機器が作られています。10月28日には、スリランカのケラニ川流域に排水機場を整える無償資金協力の書簡も交わされました。外務省は、スリランカをインド洋のシーレーン上の要衝としています。
T&S の見方
進出先の電力が止まれば、日本の工場も止まります。アジアのエネルギーを支えることは、日本の供給網を守ることです。反対の見方では、海外への支援より国内のエネルギー対策と産業の国内回帰に資源を回すべきだとの意見があります。
経営者への含意
カンボジアなどで部品を調達する企業は、現地の電力事情と代替の調達先を確かめてください。
出典
- 日独首脳会談(外務省)
- 経済安全保障協力に関する日独首脳共同宣言(外務省)
- エネルギー安定供給・物価高対策に万全を期す 中東情勢長期化踏まえ提言(自由民主党)
- 自由民主党・中東情勢緊迫の長期化を踏まえたエネルギー安定供給・物価高対策に関する提言申入れ(首相官邸)
- 日本維新の会・中東危機の長期化を踏まえたエネルギー・物価高騰対策に関する提言申入れ(首相官邸)
- 赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 令和8年10月27日(経済産業省)
- カンボジアに対する円借款「経済の強靱性向上・エネルギー供給安定化のための緊急支援借款」に関する書簡の署名・交換(外務省)
- スリランカに対する無償資金協力「ケラニ川流域における排水機場整備計画」に関する書簡の署名・交換(外務省)