2026年10月30日(金)
燃料油支援は12月から段階的に縮小、諮問会議は「当初予算中心」とAIの自律性を議論
- 首相はガソリンなどの基準価格を12月以降、春先に向けて毎月引き上げる方針を示し、電気・ガス支援は12月に前倒しします
- 経済財政諮問会議で、補正予算への依存からの脱却とAIの自律性確保が提言されました。日独は重要鉱物などで共同意向宣言を交わしました
今日の要点
- 首相は、ガソリンなどの基準価格を12月以降、春先に向けて毎月引き上げることを基本とすると表明しました。
- 電気・ガスの支援は、12月から2月の3か月に前倒しします。
- 経済財政諮問会議の有識者議員は、補正予算への恒常的な依存から脱却し、当初予算中心の運営に転じるよう提言しました。
- 同じ会議で、AIの自律性・独立性(ソブリニティ)の確保が提言され、特定のモデルに依存しない代替性も求められました。
- 日独の経済担当省が、重要鉱物、半導体、クリーン水素で共同意向宣言を交わしました。
燃料油支援、12月から段階的に縮小
事実
10月29日、首相は燃料油支援の今後について会見しました。12月以降、原油価格の動向を見ながら、春先に向けて基準価格を毎月引き上げることを基本とします。補助の単価は制度開始以来、過去最高の水準にあるとしました。当面の財源には、中東情勢等対応予備費の使用を指示しました。電気・ガスの支援は、1月からの予定を12月に前倒しし、2月まで続けます。3月は気候と価格を見て判断します。灯油は流通の円滑化を強め、価格の高い輸入灯油に財政措置を講じます。縮小の理由を問われ、首相は財政負担が「限界に近づいたという判断ではない」と答えました。
T&S の見方
価格を補助で抑え続けても、輸入燃料への依存は減りません。浮いた財源を調達先の多角化や国内の供給力に回せば、エネルギーの防衛につながります。反対の見方では、物価が高い中での縮小は家計と中小企業の負担を増やし、景気の回復を遅らせます。
経営者への含意
12月以降、燃料費は毎月少しずつ上がる前提で計画してください。運送や暖房の費用が大きい企業は、価格転嫁の交渉を早めに始めると安心です。
予算は「当初予算中心」へ、提言
事実
10月29日の第15回経済財政諮問会議で、有識者議員が予算編成の見直し案を示しました。補正予算への恒常的な依存から脱却し、継続的に必要な施策は当初予算で措置すべきだとしています。補正予算は、災害や突発的な事態、予算編成後の経済・物価の変化への対応などについて、財政法第29条を踏まえて必要性を精査すべきだとしました。ただし、経済ショック時の財政対応を控える意味ではないとしています。経済安全保障上重要な分野は、特別会計で複数年度の財源を確保すべきだとしました。外為特会は足元の為替レートを前提とすれば為替リスクへの備えは十分だとして、剰余金を積極的に活用すべきだとしました。同じ日、首相は中小企業団体の式典で、「責任ある積極財政」のもとで国内投資を引き出す考えを述べました。
T&S の見方
複数年の財源を示すことは、民間が長期の投資を決める前提になります。外為特会の剰余金の活用は、増税によらない財源の選択肢です。反対の見方では、補正予算を絞ることが、景気の下支えを弱める緊縮に転じるおそれがあります。
経営者への含意
補助金は補正予算頼みから、当初予算の複数年の枠に移る可能性があります。来年度の当初予算の中身を確かめてから、設備投資の時期を決めてください。
AIの「ソブリニティ」を議論
事実
同じ会議で、有識者議員はAIによる変革を見据えた提言を出しました。日本にはフロンティアモデルの担い手がいない現状に懸念を示しました。半導体やフィジカルAIなどで日本企業が「不可欠な存在」になるよう強化するとしています。特定のモデルへの依存を避け、海外製のAIが使えない場合の事業継続の対応も求めました。学校でのAIの利用頻度は、OECD加盟国中で最下位だとしています。
T&S の見方
基盤となるAIを海外に頼り切れば、データと判断の主権を失いかねません。国内の技術力を一定水準で保つ方針は、経済安全保障の一部です。反対の見方では、国産にこだわるより、性能の高い海外製を早く使う方が生産性は上がります。
経営者への含意
業務で使うAIを一社に頼っていないか、確認してください。使えなくなった場合の代わりの手順を決めておくと安心です。
日独、重要鉱物・半導体・水素で共同意向宣言
事実
経済産業省は10月29日、ドイツ連邦経済・エネルギー省との3つの共同意向宣言を公表しました。重要鉱物では、共同投資や両国企業の共同引き取りの支援、供給途絶の恐れがある箇所の洗い出しなどで協力します。半導体では、供給網の強靱化と半導体不足への対応策の共有を掲げました。クリーン水素では、製造から利用までの供給網全体で連携します。
T&S の見方
省庁間で実務の協力を具体化した形です。共同での引き取りは、特定国への依存を減らす具体策になります。反対の見方では、意向宣言には拘束力がなく、実際の投資が伴うかは不透明です。
経営者への含意
重要鉱物や水素の調達で、欧州企業と組む余地が広がります。共同調達の候補を探す際は、政府の支援策と合わせて検討してください。
IAEAの追加モニタリング報告
事実
外務省によると、IAEAは10月28日、ALPS処理水の海洋放出に関する追加的モニタリングの報告書を公表しました。2025年9月に福島第一原子力発電所の近くで採った海水と水産物が対象です。中国、ニュージーランド、韓国、ロシア、スイスの分析機関も参加しました。結果は、人と環境への影響は「無視できるほど」とした2023年7月の包括報告書の結論と整合するとしています。
T&S の見方
第三国の分析を受け入れて透明性を示すことは、科学的な根拠で輸入規制に対抗する手段になります。反対の見方では、国内の安全判断の正当性を国際機関の評価に頼りすぎると、主権の面で依存が深まります。
経営者への含意
水産物を輸出する企業は、この報告書を取引先への説明資料に使えます。輸出先の規制の動きも、引き続き確認してください。
出典
- 中東情勢を踏まえた「緊急的激変緩和措置」の今後の対応についての会見(首相官邸)
- 全国中小企業団体中央会創立70周年記念祝賀会(首相官邸)
- 第15回経済財政諮問会議 会議資料(内閣府)
- 予算編成の抜本見直しを実行に移すために~危機管理投資・成長投資の予見可能性と政策効果を高める予算運営~(有識者議員提出資料、内閣府)
- AIによる経済・社会の変革を見据えた政策形成に向けて(有識者議員提出資料、内閣府)
- ドイツ連邦共和国連邦経済・エネルギー省と重要鉱物分野に関する共同意向宣言に署名しました(経済産業省)
- ドイツ連邦共和国連邦経済・エネルギー省と半導体エコシステム・パートナーシップに関する共同意向宣言に署名しました(経済産業省)
- ドイツ連邦経済・エネルギー省とクリーン水素等に関する共同意向宣言を締結しました(経済産業省)
- ALPS処理水の海洋放出に関する国際原子力機関の枠組みの下での追加的モニタリングの分析結果に関する報告書の公表(外務省)