全6回 · 第1回
返済能力とは何か:無理なく返済できること
融資が返済されるかどうかだけを確かめる貸し手は、生活に欠かせない支出を削ったり、別のところから借りたりして返済している借り手を見落とすことがあります。返済能力(アフォーダビリティ)はもう1つの問いを立てます。この借り手は、家計に深刻な打撃を与えることなく、収入から期日どおりに返済できるのか、という問いです。
公開 2026年10月17日 · この回を音声で聞く
問いは1つではなく2つ
英国の消費者信用の規則は、この区別をはっきり示しています。貸し手は融資の前に信用力を評価しなければならず、その評価は2つのリスクを対象にします。1つは、顧客が期日までに返済しないリスクで、これは貸し手にとっての信用リスクです。もう1つは、顧客が返済できなくなるという顧客にとってのリスクで、規則はこれを返済能力の問題として扱います。前者は貸し手のお金に関わり、後者は借り手の状況に関わります。
2つは食い違うことがあります。借り手は、食費や教育費を削ったり、家賃の支払いが遅れたり、古い借入れを返すために新しく借りたりしながら、期日どおりに返し続けることがあります。貸し手から見れば良い返済者ですが、家計は苦しくなっており、そのリスクは後になって表に出ることがあります。
「返済できる」とはどういうことか
同じ英国の規則は、顧客の返済能力について貸し手が考慮すべきことを挙げています。要点は次のとおりです。
- 返済が、最初だけでなく契約期間の全体を通じて、期日ごとにできること。
- 返済の原資が、顧客自身の収入、他の人と共同で受け取る収入または他の人が受け取る収入(顧客が返済に使えると合理的に見込める場合に限る)、または顧客が返済に使うと明確に示した預金や資産であること。
- 返済のために借入れをする必要がないこと。
- 契約や法令で義務づけられている他の支払いができなくならないこと。
- 返済が顧客の財務状況に重大な悪影響を与えないこと。
米国では、レギュレーションZが住宅ローンの貸し手に対し、消費者が返済できることを合理的かつ誠実に判断するよう求め、考慮すべき要素を挙げています。その中には、収入または資産、雇用の状況、新しい融資の返済額、現在の債務、返済負担率または手元に残る所得、そして信用履歴が含まれます。市場によって言葉は違っても、考え方は同じです。
良いスコアや十分な担保だけでは足りない理由
信用スコアは、返済できなくなる可能性の順に申込者を並べるものです(信用スコア講座の第1回)。新しい返済が家計のどれだけを占めるかについては、多くを語りません。担保が守るのは貸し手の回収であって、借り手の家計ではありません。金融安定理事会(FSB)の住宅ローン審査の原則は、担保評価額に対する融資額の比率(LTV)を返済能力の評価の代わりにしてはならないとし、貸し手は借り手の他の債務を考慮し、すでに決まっている支出やその他の削れない支出を合理的に見込むべきだとしています。
測り方は2つ
返済能力は2つの方法で見ることができます。1つは比率で、収入のうちどれだけが債務の返済に回るかです。もう1つは残る額で、返済の後、そして多くのやり方では生活に欠かせない支出の後に手元に残るお金です。レギュレーションZは住宅ローンについて両方を定義しています。月間の返済負担率は月間の債務の支払い総額を月間の収入の合計で割ったもので、月間の手元に残る所得は収入から債務の支払いを差し引いた残りです。第3回と第4回で、それぞれを詳しく見ます。
返済負担率 = 月間の債務返済の合計 ÷ 月間の収入、 残る額 = 月間の収入 − 生活に欠かせない支出 − 月間の債務返済の合計
計算例(説明のための数字です)。月収20,000、生活に欠かせない支出12,000、既存の返済3,000の借り手が、月々4,000を返済する融資を申し込みます。返済負担率は7,000を20,000で割って35%で、ほどほどに見えるかもしれません。しかし、生活に欠かせない支出と返済の後に毎月残るのは1,000だけで、子どもの病気や収入の少ない月に備えるには薄い余裕です。2つの指標は違う姿を示すことがあり、そのため両方を見ることが役に立ちます。
貸し手にとっても重要な理由
返済能力は、借り手の保護だけの問題ではありません。マレーシア中央銀行(バンク・ネガラ・マレーシア)は2024年の分析で、ストレステストにおける深刻な失業や所得の急減(所得ショック)のもとでは、返済負担率が60%を超える借り手は、負担率の低い借り手に比べて債務不履行になる可能性が最大5.5倍高いと報告しました。同じ分析は、比率だけに頼ると借り手の返済余力を十分に説明しきれない可能性があるとし、借入れの返済後に残る所得と組み合わせて見ています。
確認をどこまで深く行うかは、融資によって変わりえます。英国の規則は、評価の範囲は個々の事情に見合ったものでなければならないとし、融資額、期間、費用などの要素を考慮するよう求めています。少額で短期の融資と、多額で長期の融資とで、同じ深さの作業は必要ありませんが、どちらでもこの問いは立てる必要があります。東南アジアの各市場で何が適用されるかは、規制のページを参照してください。
信用スコアとは何か、なぜ貸し手は使うのか(講座の回) →家計の基礎:物価、金利、賃金と、借り手の返済能力(講座) →貸付規制の比較 →
出典
- Consumer Credit sourcebook (CONC) 5.2A: Creditworthiness assessment — Financial Conduct Authority (United Kingdom), 2026
- 12 CFR 1026.43: Minimum standards for transactions secured by a dwelling (Regulation Z, ability to repay) — Consumer Financial Protection Bureau (United States), Electronic Code of Federal Regulations, 2026
- Principles for Sound Residential Mortgage Underwriting Practices — Financial Stability Board, 2012
- Looking Beyond DSR to Assess Households' Debt-Servicing Capacity (Financial Stability Review, First Half 2024, Box) — Bank Negara Malaysia, 2024