全8回 · 第1回
貸付システムが担うことと、見落とされやすいところ
貸付システムは、申込みの画面と審査だけのものではありません。この回では、どの貸付も通る6つの機能、仕事の大半がお金を貸し出した後に生じる理由、見落とされやすい領域、データと報告について監督当局が学んだこと、そしてシステムを選ぶ前に決めておくべき問いを説明します。
公開 2026年11月2日 · この回を音声で聞く
6つの機能と1件の貸付
店頭の分割払い、給与の前払い、販売店や仕入先へのファイナンスなど、商品が何であっても、どの貸付も同じ機能を通ります。貸付が通る順に、実務上の説明を示します。
- 申込みの受付:申込みを受け付け、顧客を確認し、同意を記録し、審査に必要なデータを集めます。
- 審査:貸し手のルールとスコアを当てはめ、承認・否決・保留を、限度額と価格とともに返し、どの版のルールを使ったかを記録します。
- 実行と送金:借り手に条件を示し、同意を記録し、正しい口座にお金を送ります。
- 返済と回収:返済予定を管理し、入金を受け取り、それを貸付に照合し、延滞に対応します。
- 会計:すべての動き、利息、手数料、引当金を、会社の主要な会計記録である総勘定元帳に計上します。
- 報告:経営陣、取締役会、監査人、信用情報機関、監督当局への報告を作成します。
会社は、それぞれの機能を自ら開発することも、ライセンスを受けることも、提携先に運営してもらうこともできます。しかし、どの貸付も、どの機能も飛ばすことはできません。デジタル貸付プラットフォームの構成の講座の第1回は、同じ部品を技術面からより詳しく見ています。
仕事の大半は、お金を貸し出した後に生じる
貸付システムのデモでは、たいてい申込みと審査が示されます。1度で終わり、目に見えやすいからです。しかし、貸付の残りの期間のほうが長いのです。返済の1回ごとに、期日、照合すべき入金が生まれ、場合によっては督促、遅延の費用、条件変更の依頼が加わります。そして毎月の終わりには、未収利息の計上と報告があります。
例(説明のための数字です):ある会社が年に1万件を貸し出し、それぞれを毎月12回で返済してもらうとします。審査は1万回ですが、システムは12万回の返済期日と、それと同程度の数の入金の受け取りと照合を扱わなければなりません。さらに、すべての督促、変更、訂正が加わります。最もよく話題になるのは審査ですが、日々の仕事の大半は返済の側で生じます。
貸付全体の返済に関わる処理の回数 = 貸付件数 × 1件あたりの返済回数(督促、変更、訂正を除く)。
見落とされやすいところ
次の5つの領域は、デモでは見えにくく、貸付が実際に動き出してから表に出るため、見落とされやすいものです。
- 入金の照合:入金は、遅れて、早く、一部だけ、二重に、あるいは使える参照番号のないまま届きます。それでも1件ずつ、正しい貸付に計上しなければなりません。
- 実行後の変更:期限前の完済、条件変更、手数料の免除、訂正は、それまでの内容を消さずに貸付を変えなければなりません。
- 会計と月末の処理:貸付残高の合計は毎日、総勘定元帳と一致しなければならず、引当金も同じデータから計算しなければなりません。
- 報告:監督当局、監査人、資金の出し手、信用情報機関は、それぞれ独自の形式と期日で報告を求めます。
- 既存の貸付:すでに貸付を行っている会社は、今ある貸付をその履歴とともに新しいシステムに移し、残高が一致していることを示さなければなりません。
バーゼル銀行監督委員会の2021年のオペレーショナル・リスクの健全な管理のための原則の改訂版は、取引と勘定の定期的な検証と照合を、伝統的な内部統制の1つに挙げています。貸付システムにとって照合は追加の機能ではなく、会社が自らの貸付残高が正しいと知るための手段です。
合計が合うデータ:監督当局が学んだこと
報告の質は、それぞれの機能が記録するデータの質を超えません。2013年1月に公表されたバーゼル銀行監督委員会のリスクデータの集計とリスク報告のための原則は、BCBS 239として知られています。この原則は、2007年に始まった金融危機で、グローバルなシステム上重要な銀行を含む多くの銀行が、リスク・エクスポージャーを集計し、集中を特定することを、十分に、速やかに、正確に行えなかったことが明らかになった、という認識から出発しています。原則の実施は、銀行のリスクデータを集計する能力と内部のリスク報告の実務を強化し、それによって、とりわけグローバルなシステム上重要な銀行のリスク管理を強化することを目指しています。
同じことは引当金にも当てはまります。バーゼル銀行監督委員会の2015年の信用リスクと予想信用損失の会計に関するガイダンスは、信用リスクを評価し予想信用損失を会計処理するための共通のシステム、手法、データにしっかりした基盤を与える、信用リスクの評価と測定の過程を持つよう銀行に求めています。銀行以外の貸し手がこれらの銀行向けの基準に縛られるわけではありません。しかし、監査人や資金の出し手は同じ問いを投げかけます。報告の数字を、1件ずつの貸付までさかのぼれるか、という問いです。
システムを選ぶ前に決めておく問い
提供者や設計を比べる前に、プロジェクトのチームは、短い問いの一覧に書面で答えておくことができます。その答えが、どの選択肢も同じ基準で評価するための要件になります。
- どの商品を、どの市場で、どの通貨で、初年度と3年から5年後にどの程度の件数で扱うのか。
- 6つの機能のうち、どれを自社で運営し、どれを提携先が運営するのか。
- 監督当局や信用情報機関向けを含め、誰に、どの頻度で、どの報告が必要なのか。
- 返済はどの経路で入ってくるのか。自動で照合できない入金は誰が照合するのか。
- 移すべき既存の貸付はあるか。移した後に残高が一致することを、どう示すのか。
第2回では、これらの答えを使って、自社開発、ライセンス、外部委託を比べます。
デジタル貸付プラットフォームの構成 第1回:貸付プラットフォームの構成要素:申込みから返済まで →デジタル貸付プラットフォームの構成 第4回:貸付の台帳:返済予定・利息・手数料・会計 →
出典
- Revisions to the principles for the sound management of operational risk — Basel Committee on Banking Supervision, 2021
- Principles for effective risk data aggregation and risk reporting (BCBS 239) — Basel Committee on Banking Supervision, 2013
- Guidance on credit risk and accounting for expected credit losses — Basel Committee on Banking Supervision, 2015