2026年10月20日(火)
経団連80周年での首相あいさつと、銅・酸化チタンをめぐる供給網の守り
- 首相は経団連の80周年の会で、年内に「日本成長戦略」の実行計画をつくり、今後5年の国内投資の道筋を示すと述べました
- 経済産業省は銅の供給網をめぐる官民対話を開き、中国産の酸化チタン顔料の不当廉売調査も始めました
今日の要点
- 首相は経団連の80周年の会で、「日本成長戦略」の実行計画を年内につくると述べました。
- 実行計画は、今後5年間の国内投資の道筋を示すものです。
- 銅の供給網をめぐる官民対話で、製錬の能力が特定の地域に偏ることへの懸念が共有されました。
- 中国産の酸化チタン顔料について、不当廉売関税を課すかどうかの調査が始まりました。
首相、経団連で「成長の好循環」を訴え
事実
10月19日、首相は経団連の創立80周年の記念パーティに出席し、あいさつしました。3年連続で5%台の賃上げが実現し、2025年度の国内の民間設備投資は過去最高の水準になったと紹介しました。そのうえで、日本は今、この変化を持続的な「成長の好循環」につなげられるかの分岐点にあると述べました。内閣は「責任ある積極財政」のもと、大規模で長期の、予見可能性の高い財政支出を、民間投資の呼び水として計画的に行うとしています。年内には「日本成長戦略」の実行計画をつくり、今後5年間の国内投資の道筋を示します。重点は「足元の収益源」「今後の稼ぎ頭」「経済安全保障の強化」です。
T&S の見方
政府が長い期間の支出を先に示すことは、企業が国内に投資する判断を助けます。経済安全保障を成長戦略の柱に置いたことも、供給網を国内で固める方向と合っています。反対の見方では、財政支出を呼び水にする手法は、需要を先食いするだけで、金利の上昇と財政の悪化を招くおそれがあります。
経営者への含意
年内に策定される実行計画で、重点分野と今後5年間の国内投資の道筋が示されます。設備投資の計画は、その分野に当てはまるかを確かめたうえで固めてください。
銅の供給網、製錬の偏りに懸念
事実
10月16日、経済産業省はロンドンで、銅の供給網をめぐる2回目の官民合同対話を開きました。米国、豪州、カナダ、チリ、EUなどの政府機関と、鉱山や製錬の企業が参加しました。日本からは経済産業省、JOGMEC、銅の製錬会社、電気設備などの川下の産業が加わりました。AIの基盤や再生可能エネルギーの拡大で、銅の需要は増え続ける見込みです。対話では、銅を含む重要鉱物の製錬能力が特定の地域に集中していることが、供給網の強さと経済安全保障の面で懸念だとされました。多様な製錬能力と事業者を保つ必要性も確認されました。
T&S の見方
銅はAIの基盤や再生可能エネルギーに欠かせない素材です。製錬を国内と友好国に残すことは、資源を持たない国の防衛線といえます。反対の見方では、製錬の採算を国の関与で支えると、市場の価格の働きをゆがめ、長い目で産業の競争力を弱めます。
経営者への含意
銅を多く使う企業は、地金や部材の調達先がどの国で製錬されたものかを確かめてください。長期の契約で量を押さえる選択肢も検討に値します。
中国産の酸化チタン顔料に不当廉売の調査
事実
10月16日、経済産業省と財務省は、中国産のルチル型二酸化チタンをもとにした顔料と調製品について、不当廉売関税を課すかどうかの調査を始めました。香港とマカオは対象外です。日本酸化チタン工業会が8月7日に申請していました。この顔料は白い粉で、自動車の塗料、建物の塗料、印刷インキ、樹脂の着色などに使われます。調査は原則として1年以内に終えることになっています。不当廉売の事実と国内産業の実質的な損害が認められれば、関税を課すかどうかを決めます。
T&S の見方
国内の素材産業を、安い輸入品から公正な手続きで守る動きです。素材の生産を国内に残すことは、有事の供給の備えになります。反対の見方では、関税がかかると、塗料やインキを使う川下の企業の負担が増えます。
経営者への含意
この顔料を輸入して使う企業は、調達先と価格の見直しに備えてください。調査では、利害関係者が証拠を出す機会があります。
気候対策と経済成長は「両立できる」
事実
10月15日、首相は都内でのGEA(地球環境行動会議)国際会議2026の開会式であいさつしました。自然災害の激甚化を踏まえ、防災を含む「危機管理投資」を強めると述べました。「気候変動対策」と「経済成長」は両立できるとし、エネルギー需給構造強靱化総合パッケージ(パワーGX)のもと、脱炭素、エネルギー安全保障、経済成長を同時に進めるとしました。2050年のネット・ゼロに向けた取り組みとして、グリーン鉄や世界最高効率のガス火力発電、省エネのデータセンターを挙げました。
T&S の見方
国内で電力をつくる力を高めることは、エネルギーの自給と防衛につながります。ガス火力を含めた現実的な組み合わせを示した点は評価できます。ただ、輸入燃料への依存が残る点は課題です。反対の見方では、脱炭素への投資の負担が電気料金に上乗せされ、国内の製造業の競争力を損ねます。
経営者への含意
電力を多く使う企業は、省エネ設備への更新を早めに計画してください。災害への備えも、事業継続の計画に組み込んでください。