2026年11月9日(月)
成長戦略の実行計画案に16の重点項目、サイバー対処で報告時間の短縮を指示
- 日本成長戦略会議は、17分野・62の製品・技術を3つに分けた実行計画案を示しました。年末までに策定します
- 首相はサイバー対処能力強化法の改正の検討を指示し、拉致被害者の帰国を求める国民大集会では日朝首脳会談への意欲を示しました
今日の要点
- 日本成長戦略会議は11月6日、17分野・62の製品・技術を「足元の収益源」「今後の稼ぎ頭」「経済安全保障の強化」に分ける実行計画案を示しました。
- 首相は、日銀のETFの追加売却益を新しい特別会計の財源にし、「つなぎ国債」で資金を前倒しで調達する方針を説明しました。
- 首相は、基幹インフラ事業者が攻撃を受けたことを「できれば数時間、少なくとも同日中には」伝える体制を目指すよう指示しました。
- 首相は11月8日、拉致被害者の帰国を求める国民大集会で、金正恩委員長と「率直に話し合いたい」と述べました。
成長戦略の実行計画案、16の重点項目
事実
11月6日、第9回日本成長戦略会議が開かれました。実行計画案は、戦略17分野・62の主要な製品・技術を3つに分類しています。2040年度までの経済への波及効果や、経済安全保障での波及効果が大きいものを「重点項目」としました。資料の★印は16件です。例として、フィジカル・インテリジェント・システムの中核を担う半導体、自動運転技術、次世代型太陽電池、次世代船舶などの造船分野があります。2030年ごろまでの5年間を集中投資期間とし、実行計画は年末までに策定します。足元の課題には、建設の供給力、資金供給力、電力インフラ、AI戦略・AIの社会実装の4つを挙げました。首相は各分野の責任大臣に、国内投資案件を着実に引き出せるよう、実行計画を具体化するよう求めました。
T&S の見方
経済安全保障を独立した分類にしたことは、供給網を国内に持つ意思の表れです。半導体や造船は、有事に自国で作れるかどうかが問われる分野です。電力インフラを課題に挙げた点も、エネルギーの自給と結びつきます。反対の見方では、国が重点を選ぶほど、市場が選ぶはずの技術を見誤るおそれがあります。
経営者への含意
重点項目に関わる企業は、実行計画に盛り込まれる、今後5年間の国内投資の内容を確認してください。建設や電力の制約は、国内の設備投資の計画にも影響します。
ETF売却益で新しい特別会計、つなぎ国債で前倒し
事実
首相は同じ会議で、日銀が決めたETF売却の加速化に触れました。追加の売却益を「成長の果実」と位置づけ、「強く豊かな日本」投資枠のうち経済安全保障上重要な分野の事業を計上する新しい特別会計の財源にする方針です。この特別会計では、追加の売却益を償還の財源とする「つなぎ国債」を発行し、資金を前倒しで調達します。詳しい制度設計と計上する事業は、今後の予算編成の過程で精査します。
T&S の見方
将来の収入を当てにして今の投資を急ぐ形は、積極財政の工夫の一つです。国内の供給力に先に投資すれば、安全保障にも効くと考えます。反対の見方では、売却益は相場しだいで、償還の財源として不確かです。財政の規律が緩むと懸念する声もあります。
経営者への含意
新しい特別会計の対象事業は、今後の予算編成の過程で精査されます。補助や支援の公募の時期を見込んで、社内の投資計画の準備を進めてください。
サイバー対処で法改正と報告時間の短縮を指示
事実
11月6日、第2回サイバーセキュリティに関する関係閣僚会議が開かれました。首相は、同日朝の閣議で予備費を措置したと述べました。財務大臣などには、緊急対策パッケージ全体に必要な財政措置の確保を検討するよう指示しました。担当の大臣には、サイバー対処能力強化法の改正の検討を指示しました。国家サイバー統括室への情報の集約時間を大幅に短くし、基幹インフラ事業者からの報告は「できれば数時間、少なくとも同日中には」伝わる体制を目指します。民間企業への不審な通信を統括室が把握・分析できる仕組みも、主要国の例を参考に検討します。サプライチェーンのリスクを減らす制度は、国家安全保障局を中心に検討します。
T&S の見方
攻撃の情報を早く国に集める仕組みは、国の守りの土台です。供給網のリスクを安全保障の機関が扱う点も、経済安全保障の考え方に合います。反対の見方では、民間の通信を国が把握する範囲が広がると、通信の秘密を損なうおそれがあります。
経営者への含意
基幹インフラに関わる企業は、攻撃を受けてから数時間で報告できる社内の手順を整えてください。取引先にも、同じ速さの連絡を求められる場面が増えそうです。
拉致被害者の帰国を求める国民大集会
事実
首相は11月8日、都内の「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」で挨拶しました。「私の代で何としても突破口を開き、拉致問題を解決する」との決意は変わらないと述べました。日朝平壌宣言に基づき、「対話をし、具体的に行動する用意があります」と語りました。金正恩委員長と会って「率直に話し合いたい」とも述べました。9月の国連総会の一般討論演説で拉致問題の即時解決を訴え、訪米時の首脳会談ではトランプ大統領から全面的な支持を得たと説明しました。
T&S の見方
自国民を取り戻すことは、主権国家の最も基本的な務めです。国際社会の支持を得ながら、日本が自ら交渉の主導権を持つことが大切です。反対の見方では、対話を急ぐと、核・ミサイル問題での国際的な圧力が弱まるおそれがあります。
経営者への含意
日朝の対話が動けば、東アジアの安全保障の見通しも変わります。北東アジアに関わる事業では、地政学のリスクの前提を定期的に見直してください。