T&S Asset Management

全7回 · 第1回

貸し手にとってのユニットエコノミクスとは:1件の貸付が稼ぐものと、かかるもの

貸付事業は、1件ずつの貸付で利益を出し、あるいは損失を出します。ユニットエコノミクスは、典型的な1件の貸付が稼ぐものが、それにかかる費用、つまり貸すお金、返済されない貸付、貸付の実行と回収の手間をまかなえるかを問うものです。この回では、基本の式、それぞれの部分を測る比率、貸付の額が答えを変える理由、そしてこの講座の残りの回の土台となる具体例を説明します。

公開 2026年10月15日 · この回を音声で聞く

1件の貸付を単位として見る

ユニットエコノミクスは、事業を、繰り返される最小の取引を通じて見る方法です。貸し手にとっての単位は1件の貸付、または一人の借り手が受ける貸付の全体です。問いは単純で、典型的な1件の貸付が、その期間を通じて、資金調達、損失、運営にかかる費用よりも多くを稼ぐかどうかです。

単位で見ることが大切なのは、合計の数字が誤解を招くことがあるからです。急速に伸びる貸付残高は、新しい貸付の一つひとつが損をしていても収入の増加を示すことがあり、その損失は貸付の期日が来た後になってはじめて表に出ます。単位で測ることで、成長が利益を増やしているのか、損失を増やしているのかがわかります。

基本の式

ローゼンバーグ、ゴール、フォード、トミロワによるマイクロクレジットの金利についてのCGAP(貧困層支援協議グループ)の研究は、貸し手の収入と費用を結びつける式を簡単な形で示しています。貸し手は貸付から得る収入で費用をまかない、収入と費用の差が利益、または損失になります。

貸付からの収入 = 資金調達の費用 + 貸倒れの費用 + 運営の費用 + 利益

研究はそれぞれの項目を説明しています。貸付からの収入は、借り手から受け取る利息、手数料、その他の貸付にかかる料金です。資金調達の費用は、貸し手が貸付の原資として借りるお金の費用です。貸倒れの費用は、価値が下がった貸付や返済されないおそれのある貸付に備えるものです。運営の費用は、給与、減価償却、維持費など、貸付を運営する費用です。利益は、その残りです。

それぞれの部分を比率で測る

規模の違う貸し手を比べるため、それぞれの部分を、平均の貸付残高、つまり貸して返済されていない額の1年間の平均で割ります。CGAPの研究と、マイクロファイナンスの財務比率についてのCGAPの合意ガイドラインは、主な比率を次のように定義しています。

  • 利回り:貸付からの利息と手数料の収入のすべてを、平均の貸付残高(総額)で割ったものです。ガイドラインの貸付残高利回りは、現金で受け取った収入だけを数えます。
  • 資金調達費用比率:調達した負債にかかる利息と手数料の費用を、平均の貸付残高で割ったものです。ガイドラインは別に資金調達コスト比率も定義しています。同じ費用を平均の調達負債で割ったもので、借りた資金全体の平均の金利を示します。
  • 貸倒れ費用比率:貸付の減損に対する1年間の引当費用(純額)を、平均の貸付残高で割ったものです。
  • 運営費用比率:人件費と管理費を、平均の貸付残高で割ったものです。ガイドラインは、これをマイクロファイナンス機関の効率を示す最もよく使われる指標としています。

CGAPの研究からの、当時の数字による例です。MIXのデータベースに報告していた866の貸し手にもとづくと、2011年の世界の利回りの中央値は約27%でした。インドとメキシコを除くと、貸倒れの平均は2009年のほぼ4%から2011年のやや2%を超える水準に下がりました。利益は、2004年の利息収入の約20%から、2011年の約10%に下がりました。

貸付の額が答えを変える理由

CGAPの研究は、同じ額のお金を貸して回収するのに、少数の大きな貸付よりも多数の小さな貸付のほうが、通常は費用がかかると説明しています。1件あたりの運営の費用は貸付の額とともに増えますが、額に比例するほどには増えません。そのため、貸したお金1単位あたりの運営の費用は、ごく小さな貸付ほど高くなる傾向があります。

研究は、これを貸付残高がいずれも2,000万米ドルの2つの架空の貸し手で示しています。1つめは平均200ドルの貸付を約10万件持ち、運営に400万ドルを使っています。貸付残高の20%、1件あたり40ドルです。2つめは平均2,000ドルの貸付を約1万件持ち、運営に200万ドルを使っています。貸付残高の10%ですが、1万件で割ると1件あたり200ドルです。比率で見ると1つめの効率が悪く見えますが、1件あたりで見ると使っている額は少ないのです。研究は、貸付の額がこれほど違う場合、比率による比較には意味がないとしています。

運営費用比率 = 1件あたりの運営の費用 ÷ 1件あたりの平均の貸付残高

ガイドラインは、貸したお金1単位あたりではなく、借り手1人あたりで測る尺度も定義しています。借り手1人あたりの費用で、運営の費用を平均の借り手の数で割ったものです。貸付の件数で割れば、1件あたりの費用になります。貸し手にとってこれは、貸付が小さいほど、その費用をまかなうのに高い金利が必要になることを意味します。金利に上限がある市場では、この式から、1件あたりの費用、資金調達の費用、損失の割合が同じなら、利益を出せる貸付の額に下限があることになります。どこで上限が適用されるかは、規制の比較のページで確かめられます。

具体例:1件の貸付、2つの額

説明のための数字による具体例で、1件の貸付を1年間で見ます。この貸付の平均残高は500です。貸し手は30%の利回りを得て、残高の8%を資金調達に払い、残高の3%を失うと見込みます。この貸付の運営には年に75かかります。

  • 収入:500の30%で150。
  • 資金調達の費用:500の8%で40。
  • 貸倒れ:500の3%で15。
  • 運営の費用:75で、残高の15%。
  • 利益:150から40、15、75を引いて20で、残高の4%。

次に、同じ貸し手が、平均残高200の貸付を、同じ利回り、同じ資金調達の費用と損失の割合で行うとします。運営の費用は年に50と少なくなりますが、額が小さくなった割合ほどには減りません。収入は60、資金調達の費用は16、損失は6、運営の費用は50なので、この貸付は12の損失になります。年50の運営の費用だけで、残高の25%にあたります。損益が釣り合うには、この貸付の利回りは36%必要です。16と6と50の合計は72で、72÷200は36%です。

同じ式を1件ずつあてはめると、どの貸付が自らの費用をまかない、どの貸付がほかの貸付に支えられているかがわかります。

問うべきことと、この講座の残りの回

この式は、自社であれ評価の対象の貸し手であれ、どの貸し手にも向けられる短い問いの一覧になります。

  • 典型的な貸付は、手数料を含め、実際に回収したものだけを数えて、どれだけの利回りを稼いでいるか。
  • 貸すお金の費用は、貸付残高に対してどれだけか。
  • 貸付残高のうち、どれだけの割合が失われると見込まれるか。
  • 1件の貸付を行い運営するのにいくらかかり、それは平均の貸付の額と比べてどうか。
  • 残るのはいくらで、それは貸し手が持つ資本に見合うだけのものか。

次の回からは、それぞれの部分を順に取り上げます。収入と利回り、資金調達の費用、信用損失、借り手の獲得と管理の費用、繰り返し借りる借り手の価値、そして最後に、1件の貸付が事業全体にどう積み上がるかです。